こんにちは 管理栄養士の菊池真由子です。
今号はテーマリクエストにありました「がん対策」です。
がん対策には3つあります。
1つめは発がん予防
2つめはがんになったときの生活
3つめは再発予防。
私はがんに関わる食事の専門家です。がんに関しては2冊の書籍を刊行しています。今号では、読者の方や実際の栄養相談の場でお受けするよくあるご質問についてお届けします。
菊池真由子の「がんと食事」の本
◎発がんを予防したい場合はコチラ『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』
◎発がんと再発予防の両方の場合はコチラ『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい食事と生活習慣』
答えは「ほとんど関係なし」です。
確かに食品添加物は体内の発がんを促すものがあります。例えばハムのきれいなピンク色を出すために使用される亜硝酸塩は、胃酸と混ざると発がん物質になります。
しかし、安全性が充分に確保された微量しか使用されていません。そもそも食品添加物は高額なので食品に使用する場合、コストの問題もあって、最低限しか使われていないのです。
そして最大の問題は、発がんのきっかけになるほどその食品(例えば亜硝酸塩を使用したハム)を大量に食べる【偏食】のほうが危険なのです。
野菜・果物類に含まれる食物繊維などは体に好ましくない成分を体外に排出する効果を持っています。
ハムを食べても、同時に野菜類を食べていると体外に追い出してくれるのです。
何より、がんの専門家、研究者、各種研究結果によって食品添加物が発がんに関わる確率は1%程度とみられています。
確かに、コゲた部分は発がんの要因に上げられています。しかし、焼き魚1匹をうっかり焦がしてしまった、ハンバーグが焦げてしまった、というような一般的な食事で出来てしまう「コゲ」。
これらを食べても発がんするほどの量ではありません。
どうしても気になるなら、コゲた部分だけ残せば良いのです。
そして、ここでも野菜・果物に含まれる食物繊維が発がん物質を吸着して体外に出してくれるので一緒に野菜類を食べると問題ありません。
健康食品はあくまで「食品」。医薬品のような効果はありませんし、同時に効果効能を表記することはできません。
しかし、暗示するようなフレーズ、体験談を持ち出して効果があるように見せかけています。
しかし、実際に「**エキス」などでシッカリとした効果があれば医薬品になっています。実際、シャンピニオンエキスが肺がんの一部の患者さんに医薬品として使用されています。
健康食品の効果効能を研究者もその効果についてハッキリさせたいとは考えています。
しかし、それが出来ないのが現状です。
というのも、研究というのは
1) 使用した人
2) 使用していない人
の両方の人達を何年も病状を確認して安全性やがんの状態を調べていきます。
そして
「効果があった(使用したほうが良い)」
「効果がみられなかった(使っても使わなくても同じ)」
「逆効果であった(使用しないほうが良い)」
ということを検証するのです。
しかし、問題点があります。
1) 主治医に隠れて使用する
2) 使用する・しないに関わらず研究途上で亡くなってしまう人が多い
ということが研究者を悩ませているのです。
では、現場の医師達はどうしているかというと
1) 明らかに治療の足をひっぱっている場合は禁止する
2) 治療に影響を及ぼしそうにないものなら容認
3) 本人や家族が希望しているなら無理に禁止しない
4) 無条件に禁止する
だいたいこのパターンです。
5) の医師に当たってしまった場合、主治医に隠れて使用したり、今後の治療に関して信頼して相談できる関係になるかが心配です。
がん治療に関してだけでなく、主治医とは治療に関する悩みが全て解消できるような信頼関係を築くことが重要です。
場合によっては主治医を変更することを検討することをおすすめします。
さて、がん対策として人気のある食品をピックアップして私が医学・科学的根拠として世界標準である「ナチュラルメディシン」で調べたところ
・霊芝(アガリスク)
・フコイダン
・高麗人参
・ノニ
以上は「根拠がはっきりしない」という結果でした。
ですが「使用して調子が良くなった」という人もいます。
なので全面的に否定はしませんが、効果がなくてもダメもとで、ぐらいの気持ちのほうが良いのではないかな?とは思います。
まずは2週間から1ヶ月程度試してみて、体調をチェック。
なにも変化を感じないなら別の種類の健康食品に乗り換えても良いでしょう。
乗り換えるときには、何も取り入れない期間をこれまで使用していた期間と同じ期間だけ設けましょう。使っていた健康食品の影響を消して次の健康食品の効果を冷静にチェックするために必要です。
また、色んな成分を重ね飲みすると治療の足を引っ張りやすくなることだけは憶えておいてくださいね。
伯母が骨肉腫(骨のがん)になったのが、私が小学校3年生の頃。福岡の実家から大阪に嫁いできた母は伯母の病状とともに、その子供達の心配をずっとしていました。
しかし、自営をしていたために駆けつけることもできず、電話で従兄弟達に様子を聞くばかりしか出来ません。がん保険などない時代。治療費がどんどん家計を圧迫していったようでした。
そして、母は従兄弟達に「これで“猿の腰掛け”を買って、残りは生活費にしなさい」と父に内緒で送金していたのです。
“猿の腰掛け”とは今で言う霊芝(れいし)できのこの一種です。当時から「がんに効く」と噂されていた漢方薬。
ですが実際は薬ではなく、いまでいう「健康食品」です。とにかく高額(当時:40年前で1個2万円)でしたが、母も従兄弟達もわらにもすがる思いだったことでしょう。
母に「おばちゃん、ごめん。“猿の腰掛け”を買うお金がなくなった」と泣きながら電話をしてくる従兄弟達に母は「大丈夫。おばちゃんがついてるからね」と話していました。
ですが、父は知っていたのです。母が内緒で送金していることも。その額が半端な額ではないことも。
私が父が勘づいていることに気づいて慌てていると「気にすんな」と一言だけいって伯母が旅立つときまで、何も言いませんでした。
私がまやかしの健康食品に対して厳しい態度をとっているのはこういう理由があるのです。