遺伝子解析サービスとサプリメント
最近、様々な業種の起業が遺伝子解析サービスに参入してきました。
遺伝子解析サービスとは、個人の遺伝子を解析することで持って生まれた様々な遺伝子情報を調べるものです。もっとも、体内に全ての遺伝子を解析するわけではなく、特定の遺伝子についてのみです。その特定の遺伝子の種類については各社特色があります。
さて、この遺伝子解析サービス。特定の病気や体質に関して遺伝子上の「なりやすさ」を知ることの出来るもので、予防に役立てるなどのメリットがうたわれています。しかし、解析サービスに関して法規制がない、検査業者による技術のばらつきがあります。さらには一般の消費者が「どの項目を解析するのが自分にとって有益か」ということの判断も難しい部分が残っています。解析する遺伝子数や業者によって価格についてばらつきも多く、1~2万円は覚悟していたほうがいいかもしれません。
そこで次なる課題は「解析結果の取り扱い」です。
究極の個人情報である遺伝子情報の管理は厳密でなければならなことは当然ですが、結果を受け取った利用者はどう感じるのでしょうか?
活用しだいでは「高価な占い」にしかならないのです。
予想する範囲では
1)なるほどな~と自己完結する(自分を知る。内容をどう活かすかは本人次第。占いとの分岐点)
2)同封されている結果に若干でも説明があれば、それで納得する
3)結果の意味がわからないので検査サービスをした企業や医師にさらなる説明を求める
4)サプリメントと絡めての販売があれば、それを利用する
というところでしょうか。
遺伝子解析に関する結果を踏まえての「病気の診断」と「治療」に関しては医師の専管事項
(医師だけに認められている)と考えてまず間違いありません。
このため、結果に対して踏み込んで聞きたいのであれば、医師に相談するしかありません。
つまり、解析サービスを使って病気の予防に役立てるには、医師の診断をうけないと意味がなさそうです。
問題は4)のサプリメントと絡めた場合です。
例えば「このまま放置しているとがんのリスクが高いので、このサプリメントを・・・」など、将来の健康に対する不安をあおって販売促進をするような業者が出てくることです。
ハッキリいって怪しい、場合によっては悪質といえます。
一方、病気と関係のない項目、例えばダイエットや美容などに関しては医師法や薬事法など法的規制やガイドラインが存在していません。そこで、こういった情報をもとに「おすすめサプリメント」を紹介するのはいまのところ規制がありません。ライフスタイル(食事内容や運動、喫煙や飲酒などひっくるめて)の改善をアドバイスすることは医師でなくても可能です。
特に強調したいのは「食事内容の改善」と「食事療法」は別物です。
食事内容の改善は、健康な人にするものであって、食事療法は病気の治療に行うもので、医師の診断のもとに行われるものです。なので、例えばパンフレットなどで「あなたは糖尿病のリスクが高くなっています。そこで検査結果にもとずいた食事療法をアドバイスします。このサプリメントをすすめます」というのは法律違反になります。
アドバイス側の資質についても規制がありません。ここで断言できるのは、医療などの資格のない人間が、つまり、ちょこっとセミナーで付け焼き刃的に得た知識で食事内容をアドバイスをするのは、間違った情報や自分が理解していなくてセミナーでの授業を右から左に話すような内容を流してしまいがちだということです。質問が出たとき、利用者に正確な情報を提供出来るかが疑問です。
私自身、興味があって複数企業の遺伝子解析サービスを体験しましたが、各社対応がバラバラ。
「この検査結果じゃあ、数値が並んでいるだけで利用者は意味不明」というもの、「あなたのようなタイプは使う油を変えましょう。えごま油などがおすすめです」とか。
検査結果がリスク0.0数%であっても、ゼロではないので不安になる人もいるかもしれません。
数字の羅列で「**に関してのリスクは**」と書かれているだけで「だからどうすれば?」となる意味不明な状態であれば高額な占いになります。いっそスピリチュアル系と名乗る占い師の人に将来の不安を語って占ってもらったほうが気持ちがすっきりするかも。
えごま油に至っては、そんなものスーパーに売ってません。実行が難しいようなことをさも詳しいように語られても利用者はどうすれば良いのでしょう?取り寄せですか??私なら、そんな面倒で高額になるような食品を勧めたりしません。近所で帰るもので置き換えます。
つまり、遺伝子解析サービスは法的に穴だらけというのが現状です。
私自身の考えとしては法的規制がないからといって、アドバイス側が、
素人に毛が生えたみたいな人がやっちゃいけないと思います。
利用者はアドバイスをまじめに聞いている人がほとんどだからです。
メタボ健診のように、医師や薬剤師、管理栄養士、保健師といった、きちっとした知識をもったひとが「アドバイスするシステムが必要だと思います。
いろんな食事方法がTVや書籍、雑誌などで紹介されていますが、仮に提唱者が医師であっても「陰で健康被害を受けているひとは多い」と断言できます。
ただ、遺伝子解析結果をみて、予防的観点から医師や管理栄養士が生活習慣の軌道修正をして「遺伝的にはリスクが高くても、生活習慣でリスクを下げる」とこは可能だと考えています。
あくまで例えですが、遺伝子上ではがんのリスクは低くても、がんの最大発症原因である喫煙習慣があれば、生活習慣が原因でリスクがぐんとあがります。逆は真であるとは言い切れませんが、ここは管理栄養士や保健師など、有資格者の出番なんじゃないでしょうか。
サービス先行の状態で「結果を踏まえてどのようにこれから健康を維持するか」に関しては一生の問題です。少なくともアドバイス側の人間の資質に関しては規制をかけるべきだと考えています。
==この記事に関しては日経メディカルのフェイスブックページにて質問し、誠実な回答を得たうえで書いています。改めて謝意を申し上げます==